千年前の帳簿に載る神社
927年完成の法令集『延喜式』の神名帳は、当時の国家が祈りを捧げた神社のリストです。吹田からは伊射奈岐神社の二座(山田東・佐井寺)が載り、垂水神社は最高格の「名神大社」に列しました。千年前の帳簿に載った神社に、いまも歩いてお参りできます。
特集ページを読む →
SUITA SHRINE GUIDE
千年前の『延喜式』に載る古社から、住宅地とともに生まれた昭和の神社まで。吹田市の神社19か所を、4つの物語と祭りの暦で案内します。
吹田市には大阪府神社庁に載る神社が14社あり、当サイトでは境内社・御旅所などを含む19か所を紹介しています。最も社格が高いのは『延喜式』名神大社の垂水神社で、式内社の伊射奈岐神社二座(山田東・佐井寺)が続きます。規模と知名度では山田東の伊射奈岐神社・高浜神社・吉志部神社・泉殿宮が代表的で、どんじ(10月17日)や吹田だんじり祭(7月下旬)など民俗文化財の祭りも受け継がれています。
並びは歴史的な格・規模・編集の優先順です(境内面積の統一資料は無いため、面積の順位ではありません)。
01 — FOUR STORIES
927年完成の法令集『延喜式』の神名帳は、当時の国家が祈りを捧げた神社のリストです。吹田からは伊射奈岐神社の二座(山田東・佐井寺)が載り、垂水神社は最高格の「名神大社」に列しました。千年前の帳簿に載った神社に、いまも歩いてお参りできます。
特集ページを読む →高浜神社には735年の古文書に「吹田の大宮」として現れた記録が伝わり、淀川を渡って村を開いた次田連(吹田連)一族の氏神とされます。地名「吹田」の物語は、この神社から始まります。
吉志部神社の本殿は1610年建立・国の重要文化財でしたが、2008年の火災で失われました。市民の寄付で2011年、焼失前の姿と桃山様式の彩色がよみがえりました。平安京の瓦を焼いた丘で、いまも秋の「どんじ」が続きます。
垂水神社は崖から落ちる湧き水「垂水」に、泉殿宮は雨乞いで湧いたと伝わる霊泉に由来します。泉殿宮の水は1889年にミュンヘンで「ビール醸造に最適」と鑑定され、アサヒビール発祥の工場が吹田に建つきっかけになりました。
02 — MAJOR SHRINES

いざなぎじんじゃ / Izanagi Shrine (Yamada)
927年の『延喜式』に載る式内社で、主祭神は伊射奈美之命。江戸中期建立と推定される本殿は大阪府指定有形文化財です。太鼓神輿が町を巡る秋祭りで知られます。
社伝では創建を雄略天皇の時代に求めます(伝承)。石鳥居は2018年の地震被害のあと2019年に再建。

たるみじんじゃ / Tarumi Shrine
『延喜式』で名神大社に列した、市内で古代の社格がもっとも高い神社。千里丘陵の崖から落ちる「垂水」の湧き水を名の由来とし、朝廷の雨乞いの記録が残ります。
『新撰姓氏録』は、孝徳天皇の代の旱魃に高樋で難波の宮まで水を送り「垂水公」の姓を賜った話を伝えます(後世史料の伝承)。万葉集の志貴皇子の歌に詠まれた「垂水」との関連も語られます。現在の社殿は1974年の造営。

きしべじんじゃ / Kishibe Shrine
平安京の瓦を焼いた国史跡・吉志部瓦窯跡と同じ丘に鎮座。1610年建立・府下唯一の七間社流造だった本殿は国の重要文化財でしたが、2008年の不審火で焼失。2011年に焼失前の姿と彩色で再建されました。
稚児行列が古式を伝える秋の「どんじ」は市指定無形民俗文化財。亀岡街道から約300m一直線に延びる参道「馬場」も見どころです。JR岸辺駅から徒歩20分(公式)。

いづどのぐう / Izudono-gu Shrine
阪急吹田駅から徒歩2分。社伝では869年の旱魃に須佐之男命の神輿を迎えて雨を祈ると清水が湧いたと伝わります。その「泉殿霊泉」の水は1889年、ミュンヘンで「ビール醸造に最適」と鑑定され、大阪麦酒(いまのアサヒビール)が近くに工場を構えました。
泉の湧水は昭和30年代に止まり、いまは遺構が残ります。神楽獅子(肩の上に立つ「二階獅子」)は市の登録地域無形民俗文化財です。

たかはまじんじゃ / Takahama Shrine
「大宮さん」と呼ばれる旧吹田の氏神。735年の古文書に「吹田の大宮」として現れ、淀川を渡って村を開いた次田連(吹田連)の氏神と伝わる、「吹田」という地名の物語を今に伝える神社です。現在の本殿は1693年の再建。
市指定有形民俗文化財のだんじり7台のうち3台を保管。例年7月下旬の「吹田だんじり祭」ではJR吹田駅周辺を6台が曳行します。縁結びの福うさぎでも知られます。

すさのおのみことじんじゃ / Esaka Shrine
ビジネス街・江坂の一角に森を残す旧榎坂村の氏神。1184年に京都の感神院(八坂神社)から分霊を迎えたと伝わります。17世紀後半の建築と考えられる一間社流造の本殿は市指定文化財です。
太鼓御輿と太鼓御輿神事は2009年に市の地域文化財に登録。高層ビルと鎮守の森の対比が印象的です。
すさのおのみことじんじゃ / Katayama Shrine
JR吹田駅北側、アサヒビール工場にほど近い片山の氏神。平安時代にこの地で焼き物に携わった人々が祖神・素盞烏尊を祀ったのが始まりと考えられています。1692年の記録に片山村の牛頭天王社として現れます。
天正年間と1914年の火災で古記録を失い、現在の社殿は1984年の造営。境内には出口町の愛宕神社が祀られています。

くろどいなりじんじゃ / Kurodo Inari Shrine
江坂駅から西へ約700m。保食神を祀る小さな稲荷社ですが、本殿は江戸前期の建築とされ、2011年に市指定文化財になりました。江坂神社の本殿と見比べると、近世の社殿建築の違いがよく分かります。
文化遺産データベースには桁行213.4cmという本殿の寸法が載ります——小さな社殿こそ、間近で建築を観察できます。
03 — MORE SHRINES
『延喜式』の伊射奈岐神社二座のもう一座とされ、山田東がイザナミを祀るのに対し、こちらは伊射奈岐命を祀ると伝わります。山田への遷座ののち「奥宮」と呼ばれました。社号標石は市指定文化財。 山田東の社から約1.7km。二社を歩いて巡ると式内社の歴史を体感できます。
江戸初期・1626年にさかのぼる下新田の開発とともに歩んできた鎮守。由緒では1648年の創建と伝わり、1788年の鳥居など年紀のある石造物が残ります。1953年の吹田市編入時、この神社にちなんで「春日」の町名が付きました。 管理は泉殿宮。新田集落と鎮守の関係を伝える神社です。
住宅地の丘に赤い鳥居が連なる稲荷神社。吹田市は万博記念公園駅からスタジアム・千里丘稲荷を経て宇野辺駅へ至る約5kmの散策コースを公開しており、ガンバ観戦やEXPOCITYと組み合わせて歩けます。 由緒の詳細は確認中。階段の参道があるため、車椅子での通行は現地確認が必要です。
岸部の町なかに残る小さな社。吉志部神社の御旅所と伝えられ、1874年の神名石が残ります。西宮の名次神社から分霊されたのではという説が18世紀初頭からあることを、郷土研究が紹介しています。 小栗判官の牛車の縄を「名次(なつぎ)」に結び付ける地名の伝承も残ります。
1920年代の千里山住宅地の開発とともに生まれた、新しい町の神社。1926年に京都・伏見から倉稲魂神を勧請したと伝わり、2026年はそこから数えて100年にあたります。 古代からの神社とは違う「新しい町が共同体をつくる歴史」を伝えます。
岸部南の小社。忍熊王の首を葬ったという伝承が市の地域史に紹介され、灯籠には渡来系氏族「難波吉師」の文字が残ります。吉志部神社・名次神社とあわせた岸部の歴史さんぽの一地点です。 伝承と確定した史実は分けて紹介しています。
行基ゆかりの伝承が残る丘の小社。火の神を祀り、佐井寺の伊射奈岐神社と関連付けて紹介される資料があります。
片山神社の境内に祀られる火伏せの社。1907年に合祀されたことを示す文献が紹介されています。片山神社とあわせてお参りします。
祭礼のとき神様が本社から出かけて滞在する「御旅所」。1842年の年代が伝わる神境町の地車と関連付けて市の資料に紹介されます。春日3丁目の春日神社とは別の場所です。
山田市場に残る小さな信仰の場。由緒は現地の高札などを確認中で、わかっていないことはわかっていないと記します。
岸部北に伝わる小さな祠。独立の神社か境内社かも含めて調査中の地点として記録しています。
04 — FESTIVALS
| 伊射奈岐神社(山田東) | 秋祭(太鼓神輿)10月・スポーツの日の前日 |
|---|---|
| 垂水神社 | 例祭(秋祭)10月21日・垂水戎 1月10日 |
| 吉志部神社 | どんじ(秋の例大祭)10月17日・春祭 4月16日 |
| 泉殿宮 | 十日戎 1月9〜11日・例祭 5月3日 |
| 高浜神社 | 吹田だんじり祭 7月下旬・秋祭り(湯立神事)10月5日 |
| 素盞嗚尊神社(江坂神社) | 太鼓御輿神事(市登録の地域文化財) |
| 素盞烏尊神社(片山神社) | 秋祭り 10月19日(宵宮)・20日(本宮) |
| 春日神社(春日) | 秋大祭 10月12日(2026年・公式) |
| 千里山神社 | 秋大祭 10月18日(2026年・公式)・二の午の稲荷祭 2月 |
05 — HOW TO VISIT
鳥居は神域の入口。くぐる前に軽く一礼し、参道の中央を避けて歩きます。
手水舎があれば、左手→右手→口(左手に受けた水で)→柄杓の柄の順に清めます。
お賽銭を入れ、鈴があれば鳴らし、深く2回おじぎ→2回拍手→願いごと→最後に1回おじぎ。
境内の撮影は一般に可能ですが、社殿の内部や祭祀中は控えめに。住宅地の中の神社が多いので、静かに参拝しましょう。
06 — FAQ
大阪府神社庁の一覧には14社が載っています。このページでは境内社・御旅所・調査中の小祠も含めて19か所を紹介しています。市内のすべての小祠を網羅したものではありません。
古代の社格では垂水神社です。927年の『延喜式』で最高ランクの「名神大社」に列しました。式内社としては伊射奈岐神社の二座(山田東・佐井寺)も載っています。
境内面積を同じ基準で比べられる資料がないため、順位は断定していません。規模と祭りの賑わいでは山田東の伊射奈岐神社、高浜神社、吉志部神社、泉殿宮が市内を代表する神社です。
主なものは、吹田だんじり祭が例年7月下旬(JR吹田駅周辺)、吉志部神社のどんじが10月17日、山田の伊射奈岐神社の秋祭(太鼓神輿)が10月のスポーツの日の前日、垂水神社の例祭が10月21日です。年によって変わるため、出かける前に各神社の案内をご確認ください。
伊射奈岐神社(山田東)・吉志部神社・高浜神社・泉殿宮などで授与されています。小さな神社は社務所が無人のことが多いので、電話での確認が確実です。
いずれの神社も境内は自由に参拝でき、拝観料はありません。お賽銭やお守り・御朱印は任意です。
歴史は公式由緒・吹田市・大阪府神社庁・文化遺産オンラインなどで確認し、伝承は「社伝では」と示しています。写真はWikimedia Commonsのフリーライセンス写真で、撮影年を記載しています(古い写真は現在の姿と異なることがあります)。